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修了生インタビュー vol.4

R&Dの刷新と強化で、新興国に負けないイノベーションに挑む

1. 現在のお仕事とこれまでのご経歴を教えてください。

suzuki01l_new 化学メーカー 研究部長 鈴木一充さん
入学:2016年4月、修了:2018年3月

京都に本社を置く化学メーカーの研究部長として、研究開発を担当する組織をマネジメントしています。新卒で入社してから25年間、研究開発に従事し、新規分野探索から製品の量産化まで幅広く経験してきました。MBA取得を意識したのは、マネージャー職に昇進し、研究員の部下を持つようになってからです。新規分野の開発を担ったのですが、なかなか思うように結果が出せず、部下も自分も成功体験を味わえないまま、疲弊したことがありました。業務効率の悪さを時間でカバーする悪習も根付いていたと思います。そこで、研究組織の抜本的な改革が必要だと痛感したのです。MOT(技術経営修士)も検討しましたが、技術職ゆえのバイアスも要因だと感じていたので、より幅広く経営を学べるMBAを専攻しました。
京都で平日夜間と週末に通えるビジネススクールがDBS(同志社大学大学院ビジネス研究科)だったことが入学の決め手でしたが、公開データで約4分の1の学生が自然科学系出身者であることを知り、心強く感じていました。実際に入学後、技術者同士で議論を交わす機会も多く、たくさん刺激を得ましたね。また、今出川校と大阪校で、毎週同じ授業が開講されているため、出張が多い私にとって振替受講がスムーズにできたこともメリットでした。どちらのキャンパスも少人数制でしたので、大阪で受講しているメンバーともすぐに打ち解けましたし、より多くの仲間と議論ができ、さらに視野が広がりました。

2. DBSでの専攻分野を教えてください。

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私の専攻は「イノベーションマネジメント」。その名の通り、企業にイノベーションを起こすために必要な経営戦略や組織運営を学びました。DBS では入学時に履修指導教員がついてくださるのですが、技術経営がご専門の北寿郎先生がサポートくださったので頼もしい限りでした。理系が苦手とする管理会計なども履修したのですが、計画の立案や日々のアクションを振り返る管理指標として、現在も大変役に立っています。
入学当初は、自然科学とは異なり、明確な答えが出ない科目に戸惑ったこともありました。しかし、経営学の型を一通り学んだ後は、「ミドルマネージャー」としての自分の立ち位置がクリアになり、自身の組織能力や外部要因も勘案しながら、問題にも落ち着いて対処できるようになりました。私が担当する製品は自社の主力製品である一方、近年は新興国メーカーの参入もあり、グローバル市場で開発競争が激化しています。その中にあっても冷静に打つべき手を打ち、業界の変化を客観的に捉えて戦略を実行できていると実感しています。

3. ソリューションレポート(SR)で導いた結論を、実務でも活かされましたか?

多くの修了生と同じように、私にとってSRは実際のビジネスで活きる「アクションプラン」として機能しています。私のテーマは「研究開発型化学企業のR&D組織マネジメントに関する研究」で、自社及びベンチマークとなる企業4社のR&D(研究開発)戦略の差異分析を行いました。各社の開発戦略を特許申請データから解析し、いつ、どんな分野に、どのような研究者ネットワークで開発が行われたのかを、当時の業績、経営者のメッセージも対照させながら分析しました。結論として、経営とR&Dが協働しあうこと、成長期と安定期で研究組織を有機的に変化させ、戦力の集中と分散をコントロールすることがイノベーション創出のキーになることを導き出しました。このことは自身の肌感覚として日々感じていたことも一致し、自分の考えの軸として今も意識しています。
現在は組織改革の最初の足がかりとして、SRで得た知識を応用したナレッジマネジメントシステムを研究部門に導入し、研究者の知識や経験を「見える化」するシステムをローンチしました。これを機に、研究者間の交流が一層活性化し、よりイノベーションが生まれやすい企業文化、土壌づくりに繋がることを目指しています。

4. 忙しいお仕事と学業をどのように両立されましたか?

suzuki04r DBSの仲間と「スイーツマラソン」に出場
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DBSの仲間と「びわこペーロン大会」に出場

DBSではとにかく課題の量が多いんです(それが私たちの血肉と化すのですが)。1週間で読むべき課題図書が数冊、何百ページということもありましたし、土曜日も授業があるため、休日は日曜日の1日のみ。1週間のタイムマネジメントを意識的に行い、メリハリをつけて勉強するよう心がけました。私の場合は、日曜日は休息日とし、せいぜい参考文献を探したり、課題レポートの構想や翌週の学習計画を練る程度に留めました。また、最初は課題をこなすのに孤軍奮闘していたのですが、ある先生からアドバイスをいただいた後は、クラスメート同士でお互いに助け合うようになりました。読むべき文献が多い場合は、数名で分担して読解し、サマリーを共有し合うようにしたこともあります。これにより課題作成の効率が一気に上がりましたね。何より、共に苦境を乗り越えた級友たちと深い絆が生まれ、今も交流が続いています。
DBSは少人数制のため、先生方との距離が近いことが特徴です。多くとも1講義 30名程度、専門科目は2〜3名ということもありました。その安心感から、授業中に自社の立場から質問することが多く、その場で競合他社の事例を紹介いただくこともありました。授業と実践が、常にリンクできたのも少人数制のおかげだと感じています。
もうひとつ、DBSならではの特徴として、同窓会組織「DBSネットワーク(DBSN)」の豊富な人脈があります。これにより、修了生同士の交流が活性化するのですが、この場を介して人材を紹介し合ったりして、ビジネスが生まれることもあります。自身も実際のビジネスで活用したことが何度もあります。高い経営マインドを持つ人材が揃うこの人脈は、お金に代えられない価値があると思います。

5. MBA取得後の、ご自身の意識や周囲の変化を教えてください。

当社はMBAホルダーが少ないこともあり、修了後すぐに、経営陣や直属の上司から理解を得られたわけではありませんでした。しかし、参加する会議やプロジェクトの中で、独自の分析や提案を続けていくうちに、徐々に「ユニークな発想を持つ社員だ」という理解が浸透していったように思います。現在では担当業務に加え、複数のワーキンググループのメンバーとして、研究部門全体の組織マネジメントにも積極的に関与するようになりました。今後の目標は、主力製品をSDGsの観点から刷新するための技術開発を牽引していくこと。そしてもう一つ、かなり先の話になりますが、定年後のオープンイノベーションを軸とした起業やNPO創設にも興味を持っています。MBAを取得したことで、自分の将来設計について幅広い選択肢と自信を手にすることができました。この知識を企業人としてだけでなく、社会貢献にも役立てていきたいですね。

※本記事の内容、肩書き等は2020年9月当時のものです。