修了生インタビュー vol.8
MBAでの学びを活かしクリエイティブ産業をビジネスの視点で捉える
1. これまでのご経歴と現在のお仕事を教えてください
私は同志社大学グローバル・コミュニケーション学部を卒業した後、京都に拠点を置く映画制作会社に入社し約5年間、日本をはじめ、韓国、アメリカ、台湾などの多国籍・多言語環境の中で映画制作のプロジェクトに携わりました。入社2年目にDBS(同志社大学大学院ビジネス研究科)に社会人入学し、在学中に受けた授業「マーケティング」「イノベーション」「地域ブランド戦略」「組織マネジメント」などで得たビジネスの知識をクリエイティブの現場に活用することに取り組みました。その結果、従来の制作委員会方式にとらわれない組織を作ることや、韓国でのコンテンツビジネス方式を日本の現場に応用した制作方式への挑戦、地域活性化を目的とした映画制作プロジェクトへの進出などを通じて、所属制作会社のビジネス拡大に貢献することができました。DBS修了後は京都大学経営管理大学院の博士課程に進学し映像産業のプロデューサーに関する研究に取り組むとともに、日本の放送局の中長期経営戦略プロジェクトに関わる経験もしました。博士課程在学中の4年間で次第に自分の専門領域が「製作」から「研究」へと変わっていき、2024年に無事博士号を取得、大阪公立大学商学部の特任助教となり研究と教育に携わっています。
2. DBSに入学した理由を教えてください
ビジネスに関する知識を習得することと、自分の将来の理想像を明確にするためです。映画制作会社入社後にプロデューサーを任されましたが、専門的な勉強をしていなかったため必要な知識を持ち合わせていませんでした。また、私が所属していた制作会社は大手ではなかったため、資金調達力が不足していました。日本の製作委員会の企画を引き受ける機会も少なく、業務は単に制作現場を仕切るだけであり、プロデューサーとして長期的なキャリアを築けるのか不安を感じるようになりました。そこで、自ら資金調達ができる「企業家型」プロデューサーとして成長したいと思い、ビジネスに関する専門的な知識を身に付けることができるDBSに入学を決めました。
3. DBSでの学びが仕事で役立った経験を教えてください
危機に対応できる心構えと危機を再解釈する能力が、知らず知らずのうちに私の中で育っていたように思います。DBSには、自分のビジネスやキャリアの課題を解決しようと必死に努力している起業家や経営者たちが集まっています。そのような環境に身を置いて一緒に悩むことを通じ、ビジネス上起こり得るリスクなどについて知ることができました。DBS卒業後はコロナ禍で映画制作が難しくなり職を失うことになったため、韓国に「Ohrola」というキンパ(韓国風海苔巻き)のブランドを立ち上げることにチャレンジしました。一つのブランドを作るのは映画をプロデュースすることと似ており、前職での経験を活かすことができました。加えて、DBSという環境の中で起業家の方々と触れ合うことで、知らず知らずのうちに新しい分野に挑戦するビジネスマインドが私の中に育まれていたのだと思います。Ohrolaブランドをプロデュースする際には、伝統的な食べ物であるキンパに新しい価値を感じてもらうにはどうすればよいか悩みましたが、山下先生の授業の中で大手食品メーカーの製品開発部門の役員を対象に製品を提案するという企画があり、そのときにお菓子のプロトタイプを製作した経験を思い出しながら、ブランドのカラーに合うパッケージデザイン、ロゴスタイル、店内の雰囲気を作り上げました。その結果ブランドの認知度を向上させることに成功、2024年 KCIA韓国消費者産業評価「外食業」(キンパ部門)全地域上位0.64%以内の最終優秀企業に選定されました。今では韓国のアイドルグループTWICEの日本人メンバーであるサナさんが好きなキンパとしても知られています。
4. DBSで大変だったことはありますか?
4. DBSで大変だったことはありますか?
クリエイティブ産業のビジネス構成要素が他の産業では何に相当するのかを理解することに苦労しました。特に、映画という「芸術」を「ビジネス」として認識してもらうために、どのような言葉や概念を用いれば適切かを考えることは簡単ではありませんでした。映画制作には多くの芸術的な要素が含まれており、それをビジネスの観点から説明するには、例えば、製造業の品質管理における4M(Man、Machine、Material、Method)が制作現場において何に当たるのかなど、具体的なビジネス要素に置き換える必要がありました。また、私は主に土曜日に授業を受けていたため、課題に追われなかなか土日に休むことのできない2年間でした。
5. 大学教員としての今後の抱負を教えてください
まずは研究業績を積み重ねることに注力しています。将来的には、私が指導する学生がユニークなアイデンティティを持ち、それを仕事に活かすことができる人材として成長するように支援したいと考えています。授業を一つのコンテンツとして捉えると、教員はプロデューサーで、学生は監督であり顧客でもあります。そんな学生が授業というコンテンツの中で自由にアイデンティティを表現できるよう支援したいです。そのためにも、90分間学生が楽しめるような、そして家に帰る時に「あの授業は楽しかったな」と思ってもらえるような授業を作っていきたいと考えています。
6. どのような人にDBSに来てほしいですか
経営学に興味がなかった方や、自分にはビジネスマインドがないと考えてしまっている方にも来てほしいです。ビジネスに興味はあるけれども自信がない、自分は経営者に向いていないと思ってしまっている人にもチャレンジしてほしいですね。私自身もそうでしたが、こういった人たちがDBSで得られる刺激には、大きなものがあると思います。あえて飛び込むことで新たな自分を発見できるチャンスがDBSにはあります。
※本記事の内容、肩書き等は2024年6月時点のものです。
(取材 同志社学生新聞局)