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高広伯彦教授の対談記事がウェブメディアに掲載
技術と事業をつなぐ「技術マーケティング」とは何か
本ビジネススクール高広伯彦教授の対談記事がウェブメディアに掲載されました
技術マーケティングは、なぜ通常のマーケティングと異なるのか
本ビジネススクール高広伯彦教授が、BtoBマーケティング支援企業マーケットワン・ジャパン合同会社の大橋慶太氏との対談に登壇しました。「技術はあるのに、なぜ事業にならないのか」——この問いを軸に展開された議論の全容が、同社のウェブメディアに掲載されています。
高広教授がDBSで担当する「技術マーケティング」の授業では、一般的なマーケティングとの根本的な違いとして、「現在の顧客ニーズから始まらない」という前提が置かれています。製品を特定顧客の現在のニーズに合わせて届けることに重点を置く一般的なマーケティングや、営業支援のためのセールスマーケティングとは異なり、技術に関するマーケティングはこれから形成される「派生需要」(※1)の行方を、将来の時間軸において読み解く力を必要とします。R&Dで生み出された技術はしばしば市場の声に先行して存在するため、そのプロセスは本質的に異なる、というのが高広教授の論点です。
「R&D+D」——技術に社会実装の構想力を加える
この課題に対して高広教授が提唱するのが、「R&D+D(※2)」という発想です。研究・開発の機能に「デザイン=社会実装の構想力」を加えることで、技術をいかに将来の顧客課題や社会課題と接続するかを組織として担えるようにする、という考え方です。その実践的な思考ツールの一つとして対談で紹介されているのがホライズンスキャニング(※3)であり、VUCA(※4)の時代において近い将来から遠い将来まで時間軸で分け、複数の段階的な未来シナリオを描きながら自社技術の活かしどころを構想します。対談では、韓国の某B2C企業が自社の技術をB2B領域に転用して進出し始めている事例が挙げられています。
IPランドスケープを超えて——「WHO WE ARE」を問う
未来シナリオを描く際の自社資源の把握においては、IPランドスケープ(※5)の活用が触れられる一方、高広教授はその限界も指摘します。特許情報を起点に投資判断を行うIPランドスケープは有効なツールである一方、特許だけでは測れない技術的信頼性やネットワークといった「見えにくい資産」をも含めて自社資源を総体として捉えることが重要だという論点です。そこで高広教授がもう一つの提唱概念として挙げるのが、「WHO WE ARE(※6)」という問いです。「自社は何者であり、何ができるか」を定義できているかどうかが、未来シナリオと自社強みを重ね合わせた事業構想の精度を左右すると論じています。
オープンイノベーションの前提としての自己定義
この文脈で改めて問い直されるのが、オープンイノベーション(※7)のあり方です。外部の知見や技術を取り込む仕組みとして注目されてきた一方、WHO WE AREが定まっていなければ、外部との連携は十分な成果を生みにくい。まず自社の強みと方向性を整理することが、オープンイノベーションを実りあるものにする前提条件だと述べています。
技術を社会価値へとつなぐためには、顧客視点にとどまらず社会全体を見渡す視座が求められる——そのような高広教授の問題意識は、理論と実務の接続を追求するDBSの教育方針とも重なるものです。
対談の全文はマーケットワン・ジャパン合同会社のウェブサイトにてご覧いただけます。
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派生需要(Derived Demand)
派生需要とは、ある製品・サービスへの需要が、それ単独ではなく別の製品や市場の需要から「派生」して生じる現象のことです。たとえば半導体は、スマートフォンやPCが売れる市場があってはじめて需要が生まれます。半導体メーカーが売り込む相手は一般消費者ではなく、その先にある別の市場の動向なのです。技術マーケティングにおいては、「自社の技術は将来どの需要と結びつくか」を時間軸で読むことが、事業化を構想する際の出発点となります。
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R&D+D
R&D+Dとは、Research(研究)とDevelopment(開発)からなる従来のR&Dに、Design(デザイン・企画)の機能を加えた概念として高広教授が提唱するものです。ここでいう「デザイン」とは、見た目のデザインではありません。「この技術は社会のどんな課題に使えるか」「将来どんな使われ方をするか」を構想する力のことです。技術者だけが事業化を考える必要はなく、そうした社会実装を担う機能を組織の中に持つことが重要だという考え方です。
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ホライズンスキャニング(Horizon Scanning)
ホライズンスキャニングとは、未来の変化を時間軸で3つの層に分けて捉える思考手法です。比較的近い将来に高い確度で起こりそうなこと(ホライズン1)、少し先に起こり得る変化(ホライズン2)、遠い将来の可能性(ホライズン3)——この3層で複数の未来シナリオを同時に描きます。「必ず来る未来」を一点に絞り込むのではなく、どのシナリオが現実になりつつあるかを見極めながら、自社技術の出番を構想するための枠組みです。
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VUCA
VUCAとは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった言葉で、先行きが読みにくい現代のビジネス環境を表す概念です。かつては「正確な未来予測をもとに計画を立てる」ことが戦略の前提でしたが、VUCAの時代にはその前提自体が成り立ちません。だからこそ、複数のシナリオを並行して描き、状況に応じて対応できる構えが求められます。
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IPランドスケープ
IPランドスケープとは、特許情報などの知的財産(IP)データを経営・事業戦略の観点から分析し、競合他社の技術動向や自社の強み・空白領域を可視化する手法です。どこに投資するか、どの技術領域で差別化できるかを判断する際に活用されます。一方で本対談では、特許数だけでは見えてこない技術的信頼性やネットワークといった「見えにくい資産」にも目を向ける必要があることが指摘されています。
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"WHO WE ARE"
"WHO WE ARE"とは、「自社は何者であり、何ができるか」を特許や売上といった数字だけでなく、長年培ってきた技術的信頼性・ネットワーク・知見といった「見えにくい資産」も含めて総体として定義する力として、高広教授が対談で挙げる概念です。たとえば長年モーター技術を磨いてきた企業には、特許数には表れない技術的な信頼の蓄積があります。どんなに精緻な未来シナリオを描いても、「自分たちは何者か」が曖昧なままでは、自社の立ち位置は定まりません。アントレプレナーシップ研究のEffectuationでも同様に、自らの手持ちの資源の把握が出発点として重視されています。
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オープンイノベーション
オープンイノベーションとは、自社内の研究開発だけに閉じるのではなく、外部の企業・大学・スタートアップなどの知見・技術・アイデアを積極的に取り込みながらイノベーションを推進する考え方です。2003年にハーバードビジネススクールのHenry Chesbroughが提唱して以来、多くの企業で採用されてきました。ただし対談では、「ドアを開けていても、相手にとって入るだけの魅力がなければ誰も来ない」と指摘されています。外部との連携を実りあるものにするためには、まず「WHO WE ARE」を明確にしておくことが前提条件になるというわけです。
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