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トピックス

修了生 五島光さんの論文が国際学術誌に掲載

2026年3月31日 更新

なぜ顧客に満足されていても、売上は伸びないのか?

本大学院修了生・五島光さんの論文が国際学術誌『Journal of Retailing and Consumer Services』に掲載されました 

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本ビジネススクール第9期修了生で、現在は大阪経済法科大学にて教鞭を執られている五島光さんの論文が、リテールおよび消費者サービスの分野で権威ある国際学術誌『Journal of Retailing and Consumer Services』に掲載されました。同誌に日本人が単著で論文を掲載するのは、極めて稀な快挙といえます。
本研究は、顧客満足度(CS)が高くても必ずしもウォレットシェア(SoW ※1)の拡大に繋がらないという「態度–行動ギャップ」の解明に挑んだものです。
顧客経験品質(EXQ ※2)や相対的満足度(RSAT ※3)によって、SoWが予測しうると考えられてますが、一定の結論が得られていません。また既存研究は西洋市場に偏っており、日本での検証が不足していました。
そこで本研究で五島さんは、従来の構造方程式モデリング(SEM ※4)では捉えきれなかったミクロな要素間関係を可視化するため、心理学的ネットワーク分析(PNA ※5)を組み合わせた「二層診断」を提案。日本市場のデータを用いた実証分析により、ウォレットシェア(SoW)が評価システムから構造的に断絶していることを数学的に示しました(※6)。
この研究成果は、「経験価値を高めるだけではシェア拡大には不十分であり、利便性やスイッチングコストといった別次元の要因への介入が必要である」という実務的な示唆を与えています。
理論と実務の架け橋を目指すDBSの精神を体現する、素晴らしいニュースです。本スクール修了生の国際的な場でのご活躍を、心より応援しております。

※1

ウォレットシェア(Share of Wallet / SoW)とは、ある顧客が特定のカテゴリに使うお金の総額のうち、自社に使ってくれている割合のことです。
例をあげると、週に外食に5,000円使う人がいるとして、そのうち3,000円をA店で使っていれば、A店のウォレットシェアは60%となります。A店の顧客満足度が高かたっとしても、他の店にも行き続けていればこのシェアは上がりません。それがまさにこの論文が問う「満足しているのに、なぜお金が増えないのか」という問題の核心です。SoWは、「新規顧客を獲得する」より「既存顧客に、もっと自社を選んでもらう」という観点で重要な指標であるため、サービス業や小売業のマーケティングでよく使われます。

※2

顧客経験品質(EXQ:Customer Experience Quality)とは、顧客が企業やサービスと接触する一連の体験全体を、どれだけ質の高いものと感じたかを測る概念です。単純な「満足度」よりも広く、体験のプロセス全体を捉えようとするところが特徴です。一方、顧客満足度(CS:Customer Satisfaction)は、購買後の評価、結果への評価が主眼となります。

※3

相対的満足度(RSAT:Relative Satisfaction)とは、「このお店、良かった」という絶対的な満足ではなく、「他のお店と比べて、このお店の方が良い」という競合との比較を前提にした満足度のことです。通常の満足度とは、例えばあるお店単体への評価ですが、RSATの場合は相対的な評価となるため、SoWに近い指標になると考えられてきました。

※4

構造方程式モデリング(SEM:Structural Equation Modeling )とは、複数の変数の間にある因果関係や影響の強さを、まとめて検証できる統計手法です。「原因→結果」という矢印の連鎖を、データを使って数値で示すことができます。

※5

心理学的ネットワーク分析(PNA:Psychological Network Analysis)とは、変数同士(=個々の要素)の関係を互いに影響し合うシステムとして捉え、視覚化・分析する手法です。SEMが「要因」と「結果」の強さを重視するのに対し、PNAは、いろいろな要素(例えば接客、品質、価格など)が互いに影響し合って一つのサービスというシステムを作っていると考えます。その結果、どの要素とどの要素がつながっているか、どの要素がハブになっているか、どの要素が孤立しているかがわかります。本研究の場合、SoWがサービスの評価(のシステム)からは孤立している(=構造的に断絶している)ということを明確にしたということになります。

※6

日本の対面サービスのリピート顧客532名を分析。SEMではEXQ→RSATに有意な正の関連(β=0.368)が確認されたが、RSAT→SoWは微弱(β=0.086)でSoWの説明分散はわずか0.8%であった。PNAでは、SoWがEXQ–RSATの評価コアから完全に孤立(強度中心性0.00)していた一方、SPE7(心地よい対人関係)やSPE6(共感性)が高い中心性を示し、PPE2(ニーズ理解)やPPE5(問題対応力)がドメイン間のブリッジとして機能していた。 これにより、態度–行動ギャップは単なる弱い係数ではなく、SoWが評価システムから「構造的に断絶」しているという測定システムの特性として再定義された。実務的には、経験評価の向上だけではSoW拡大に不十分であり、利便性やスイッチングコスト等の追加要因への介入が必要であると提言している。
*SPE:Service Provider Experience
*PPE:Post-Purchase Experience

『Journal of Retailing and Consumer Services』

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