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井上ゼミ

放牧の学び場

井上先生_正方形  (118843)

井上 福子 教授
専門分野:人的資源管理・組織開発

神戸大学博士(経営学)、インディアナ大学MBA(アントレプレナーシップ専攻)、ロンドン・スクール・オブ・エコノミックス・アンド・ポリティカル・サイエンスMSc(比較労使関係および人事管理)
日本企業に勤務の後、留学を経て、複数の国際機関および大手外資系企業に勤務。
外資系企業では、部長職、人事本部長職等、要職を歴任。国際原子力機関(ウィーン本部)の人材計画課長、上級人事担当官を経て現職

井上ゼミ_1  (118837) 左側から:高山さん  中央:井上教授  右側:高尾さん
(井上先生の研究室にて撮影)

今回は井上福子先生のゼミにお邪魔して、現役生でホテル業界で働く高山有未さん(以下、高山さん)と、人事職の道を歩み始めたばかりの高尾麻琳さん(以下、高尾さん)に、ゼミでの学びや経験、雰囲気、そして井上先生のお人柄について伺いました。

1. 簡単なご経歴と井上ゼミを選んだ理由を教えてください

高山さん
私はホテルに勤務しており、入学前にDBSの授業を無料で体験できるMBA入門シリーズ講座に参加しました。そこで井上先生の「組織行動と人的資源管理」の講義を受講した際に、ホテルでの組織管理においても柔軟な仕組みや新たな発想が必要だとの先生のお言葉に強く共感しました。その経験から、井上先生のもとで是非学びたいと思い、井上ゼミを選びました。
高尾さん
私が井上ゼミを選んだのは、井上先生が大手外資系企業で人事部長を務められたご経験に大きな魅力を感じたからです。私は以前Apple Japanで勤務し、外資系ならではのグローバルな環境で幅広い業務を経験する中で、人材マネジメントに関する理論的な知識の不足を痛感しました。将来的に人事分野でより高いレベルの役割を担うためには、実務経験だけでなく体系的な学びが不可欠だと考え、在職中にDBSへ入学しました。現在は日本企業で人事職に従事し、MBAで学んだ内容を実務に活かしています。その上で、理論と実務を結びつけた学びをさらに深めたいと考え、井上ゼミを志望しました。

2. ゼミではどのようなテーマで研究されていますか?

高山さん
障がいを持つ従業員のワークエンゲージメントを向上させることが、周囲の従業員にどのような影響を与えるかについて研究しています。これまでの研究では、企業における障がい者雇用の取り組みが大きく二つの型に分けて論じられています。一つはCSR(企業の社会的責任)型で、法的義務や社会貢献の観点から雇用を進めるものです。もう一つはSDGs(持続可能な開発目標)型で、多様性の尊重や持続可能な成長といった観点から、企業活動の一部として雇用を捉えるものです。これについて、私はホテルでの実務経験から、両者はいずれも欠かせない要素であり、一方を選ぶのではなく相互に補完し合う必要があると考えました。そこで私の研究では、両者の長所と課題を整理し、今後の障がい者雇用の方向性を探究したいと考えています。
高尾さん
私の研究テーマは、「配属ガチャ」の問題です。配属ガチャとは、新入社員が入社後にどの部署や勤務地へ配属されるかが、本人の希望よりも会社の都合で決まり、結果が運任せに感じられる状況を指す言葉です。特に、日本ではまだメンバーシップ型雇用が多く、希望外配属によってモチベーションが下がり、早期退職につながるケースが生じていると言われます。そこで私は、希望とは異なる部署に配属された社員を対象に研究を行っています。具体的には、OJT担当者や人事担当者といった「社会化エージェント」がどのようなコミュニケーションを取れば社員のモチベーションを維持できるのか、さらにそのモチベーションの維持が理想的なキャリア形成につながるのかを探っています。

3. 井上先生とのゼミでの関わりについて、具体的に教えていただけますか?

高山さん
研究が行き詰まった際には、先生が関連論文を共有してくださったり、個別相談で直接話を聞いてくださったりと、適切なサポートをいただけます。普段からチャットやメールでも質問に対応していただけるため、私が研究を自ら考え進めていけるよう見守りつつ、必要に応じて的確に支援してくださる点が非常に心強いです。ゼミでは毎回研究の内容についてゼミ生みんなでディスカッションを行い、研究の方向性を明確にしていきます。
高尾さん
井上先生は数十年にわたり人事の第一線で活躍されてきた一方、私はまだ人事の2年目です。井上先生は、長いキャリアで培った現場感覚とアカデミックな知識の両方を兼ね備えており、それらをもとに、研究だけでなく実務にも活かせる的確な助言をしてくださいます。実際に先生にご指導いただいた内容を活かし、社内で新たな制度の構築や、組織開発に関わる取り組みを推進することができました。

4. 井上ゼミの雰囲気や井上先生の魅力について教えてください

井上ゼミ_2  (118838) 井上教授の研究室にて
高山さん
ゼミの雰囲気はいつも和気あいあいとしており、とても居心地がよいです。井上先生の魅力は、細やかな気遣いです。先生はゼミ勧誘のオリエンテーションの時から「放牧」という言葉をよく使われます。これは決して「放任」を意味するものではありません。同志社大学はキリスト教主義を建学の精神としていることから、「マタイによる福音書」の99匹の羊のたとえ話のように、誰かが遅れていても決して見捨てず、そっと手を差し伸べてくださいます。さらに、井上先生はDBS修了生や他ゼミの学生の見学も積極的に受け入れています。そのため、見学に来た方から、私たちの発表に対して客観的な視点での助言をいただけることもあります。
こうした開かれた姿勢も、井上ゼミならではの大きな魅力です。また、ゼミでは一人ひとりに目を配りながら、全員が修了することを必須課題としています。仲間同士で助け合い、共に前へ進める環境が整っている点も、井上ゼミの強みです。
高尾さん
ゼミには、伝統企業の社長、個人事業主、大学職員など、様々なバックグラウンドの方が7人在籍していて、皆さんそれぞれの立場や状況に根差した課題を研究しています。毎回のゼミ後の親睦会では、研究につながるヒントを得ることもあります。堅くなりがちな発表の場とは違い、柔らかい雰囲気の中だからこそ答えが見えてくることもあるのだと思います。自分の研究を他者の視点から見直したり、日常の枠を超えて考えたりできる、貴重な機会となっています。

5. 最後に、このゼミでの学びを、今後のキャリアにどう繋げていきたいかお聞かせください

井上ゼミ_3   (118839) 左側:高山さん     右側:高尾さん
高山さん
私は、働く人たちのキャリアや職場環境をより良くする取り組みに関わりたいと考えています。井上ゼミで取り組んでいるソリューションレポート(SR)の研究は、そのための基礎になります。現在は、それを活かして、今後のキャリアの方向性を模索しているところです。将来的には、DE&I推進や組織・意識改革の分野で自分の力を試したいと考えています。
高尾さん
井上先生は私の目標です。 私は最終的にはアカデミックの世界で人に教える立場になりたいと考えています。その目標達成のために、海外への挑戦も今後のビジョンにあり、DBSの修了はそのための大切なステップになると思っています。

6. 井上先生から未来のゼミ生へ一言

井上ゼミには、私の専門領域である組織・人・リーダーシップに関わるテーマでSRを書く学生が多く集まっています。歴代のゼミ生は個性的で、型にはまらない方が多く、その意味で多様な人々が出会う場となっています。ゼミ運営において私が意識しているのは「放牧」です。これは、学生を型にはめずに自由に思考を広げてもらうという意味です。テーマは多岐にわたりますが、共通しているのは「自分の会社や社会をより良く変えていきたい」という思いです。その思いを、1年半という限られた時間の中でSRという形に結実させてもらいたいと考えています。また、ゼミには先輩方が参加する機会も多く、実務経験に基づいたアドバイスや時に厳しい質問をいただけます。こうした刺激を受けながら、課題について自由に思考を深め、答えを導き出し、さらに行動につなげていく。この過程こそが、変化の激しい社会を力強く生き抜く力を養う、何よりの訓練になると考えています。

※本記事の内容、肩書き等は2025年月7月時点のものです。
(取材 同志社学生新聞局)