オムロン基金研究プロジェクト(2013年度)
「友禅宇宙キモノ」による伝統産業の新たな地平の創出
研究目的
「伝統産業グローバル革新塾」(「革新塾」)は、2007年度に文部科学省の助成金を受けて始められたプロジェクトで、京都の伝統産業の若手経営者へのビジネス教育を通じて、次世代を担える伝統産業の経営者を育成し、これにより、京都の伝統産業を活性化させようとする目的を持って発足した。「革新塾」は、京都の伝統産業を活性化させる産学連携プロジェクトであり、オムロン基金プロジェクトの(7)京都及び関西地域における産学連携、地域活性化等の推進、をめざしたプロジェクトである。
当プロジェクトは、2009年度からはオムロン基金の助成を受け、京都の伝統産業のグローバル化をめざして、2009年11月にはパリで「京都の赤展」を開催するなど、内外で様々な活動を企画、実施した(2007-2012年における「革新塾」の活動については、『伝統産業から文化ビジネスへ:「伝統産業グローバル革新塾」の5年間』(マリア書房、2012年)を参照)。そして、2013年3月末に、「革新塾」メンバーを中心にして「株式会社COS
KYOTO」を大学発ベンチャー企業として設立するまでに至った。
一方、当プロジェクトは、2007年より、宇宙航空研究開発機構(JAXA)とコラボレーションを行い、伝統産業の活性化の取り組みを行ってきた。ここでは、宇宙と京都の伝統産業のコラボレーションの意義に関する研究とともに、宇宙素材を使った製品開発を行い、お守り「アミュレット」などのヒット商品も生み出した(「革新塾」の宇宙分野における取り組みについては、『伝統産業から文化ビジネスへ』第4章を参照)。
「革新塾」の宇宙プロジェクトは、2010年3月に正式にJAXAの文化・人文科学利用パイロットミッションに採択された。これは、「「赤色」でつなぐ宇宙と伝統文化」と題されたプロジェクトで、友禅染の桜の花びらを無重力の宇宙空間で飛翔させ、これを3Dカメラで撮影して記録し、これを新たな伝統産業のデザイン素材とする試みである。この実験は、2012年2月2日に国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」の船内で実施され、宇宙に漂う桜吹雪の3D撮影に成功した(この取り組みの詳細については「京の伝統に新風を吹き込む「きぼう」に舞う桜吹雪」(『JAZA'S』2012年11月号、を参照)。そして、この映像をベースにした友禅着物の基礎デザインが作成された。
申請プロジェクトは、この基礎デザインを使って、宇宙桜吹雪の友禅キモノを完成させて広く社会に発信し、京都の伝統産業の新たな地平を示すとともに、低迷する業界に刺激を与え、その活性化の一助とする目的を持つ。