修了生インタビュー vol.25
現場と経営をつなぐ視点 看護職が経営を学ぶ意味
1. これまでのご経歴を教えてください

入学:2023年4月 修了:2025年3月
私は短期大学を卒業後、一般企業に3年間勤務しました。その後、看護師を目指して看護学校に入学。卒業後は京都市内の医療機関に就職し、2009年に洛和会ヘルスケアシステムへ転職しました。臨床看護師として経験を重ねる中で、看護学をより体系的に学びたいと考え看護系大学院修士課程に進学し、そこで経営的視点の必要性を痛感したことからDBSに進学しました。現在は、看護部長として病院経営や看護部門運営に従事しながら、看護学研究科博士後期課程にも在籍しています。
2. 数あるビジネスクールの中でDBSを選んだ理由は何ですか?
DBSを選んだ理由は大きく四つあります。第一に、幼少期から京都で育った私にとって、同志社大学が高い知名度を持つ大学であったこと。第二に、DBSが経営系の専門職大学院として伝統をもち、組織が直面する諸課題を解決するための専門的かつ総合的な知識を獲得できる場だったこと。第三に、修了後も学び直しができるシニアアシスタント制度など、学生の学びを支える環境が整っていたこと。そして第四に、看護職でMBAを持っている先輩から推薦されたことです。
3. DBSでは具体的に何を学ばれましたか?

緊張から解放され笑顔を見せる井上ゼミのみなさん(戸倉様は右から3番目)
私は、ゼネラルマネジメントの分野を中心に、共通・専門科目を幅広く履修しました。特に、組織マネジメントや人的資源管理、経営戦略、イノベーションの授業は大変興味深く、リーダーシップ理論や組織行動学習論、競争戦略論など、実務に直結する具体的な方法やフレームワークを学びました。
ソリューションレポート(SR)では、看護部長の管理的意思決定の実態(意思決定要因)を明らかにすることをテーマに、医療機関に勤務する看護部長がどのようなプロセスで意思決定をしているのかを検証しました。
近年では、看護部長が看護職副院長に登用されるケースも増加傾向にあります。しかし、中小規模の医療機関では、依然として看護部門すなわちケアの領域にとどまることが多いです。今回の研究結果から、看護部長は、看護固有の理論を背景に、患者中心(顧客)の視点や生活者の視点を持ちながら意思決定をしていることが明らかになりました。これらの視点を活かした意思決定は経営判断の場面においても有用であり、看護部長が、あらゆる組織規模の医療機関において、新たな役割を担い得る医療専門職であることが示唆されました。そのため、医療機関が今後の厳しい外部・内部環境の変化により柔軟に対応するには、経営管理部門に看護職を配属すること、そして経営判断が求められる場面に看護職が積極的に関与できる体制を整えることが必要だと提案しました。
4. DBSに入る前と後で変わった点はありますか?
DBSでの学びを通じて、専門職としての判断と経営者としての判断を、バランス良く捉える視点を身に着けました。これまでは、看護管理者として受けた教育、あるいは臨床経験の範囲で現象を解釈し、意思決定を行うことが多かったように感じます。しかしDBSで学ぶことで、さまざまな視点から現象を捉え、解釈できるようになり、部分最適だけでなく、病院組織の一経営者として全体最適を意識する視点を持てるようになりました。私には、看護管理者として、経営者として、そして一人の看護師としての、複数の役割があります。それぞれの役割を状況に応じて使い分けたり、両立させたりする力、――すなわちバランス感覚は、DBSに来て初めて本格的に学べたものだと感じています。
5. 看護職という専門職がマネジメントを学ぶ意義は何ですか?

看護職は、24時間いのちをまもり支える専門職です。そして、看護職には、保健・医療・福祉の幅広い分野で、人々が住み慣れた地域で健康に暮らし続けられることへの支援や組織の持続的な事業運営等の役割が期待されています。そのような中で、意思決定する際に最も重要なのは「問題をどう認識するか」です。そしてその問題認識の質は、どれだけ多くの知見を持ち、どれだけ多様な価値観や視点に触れているのかによって大きく左右されます。そのため、私たち看護職が専門職としての視点と経営者としての視点を持ちながら現場に立つことが、より重要になると感じています。その点において、DBSの学びは非常に大きなインパクトがありました。加えて、DBSのネットワークを活用することで、私の実践におけるアプローチの幅も大きく広がりました。
6. どのような人にDBSを勧められますか?
DBSは、「これまでのキャリアに自信と意味を与えながら、これからの未来を具体的に描くことができる場所」です。私はDBSで、医療という枠を超えた多様な人たちとの対話を通じて、新たな発想や多角的な視点を身につけることができました。だからこそ、「世の中をどのように見ればよいのか」「今のままでよいのか」と迷っている人、役職や経験年数に関係なく学びたい、自分の視野を広げたい、変化したいと願っている人、組織をよりよくするために成長したいと考えている人に、ぜひ来てほしいです。そのような方にとって、DBSは最強のツールになると思います。
※本記事の内容、肩書き等は2025年5月時点のものです。
(取材 同志社学生新聞局)